おうちのネトフリ女子

Netflix、U-NEXT、Disney+、アマプラetc...今すぐ観れるオススメ作品紹介します!

「ラブ・イズ・ブラインドJAPAN」人を見抜く耳は持っているか?

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人の恋愛なんて興味ないよ、という人に恋愛リアリティーは目に止まらないかもしれない。それはラブコメドラマや純愛映画を見ないのと同じ理由だろう。

しかし人間観察をするのが好きな人は多いのではないだろうか?

山にこもって人を避けて生活しているのでなければ、あなたはいつだって人とコミュニケーションをとる環境にいるのではないだろうか?

どうせやらせでしょ、イチャイチャなんて見たくないよ、そう言わずに人間ドラマだと思って俯瞰して捉えて欲しい。恋愛リアリティーはそんな生易しいものではない。

 

今大人気の婚活リアリティーショー

Netflix「ラブ・イズ・ブラインドJAPAN」

実験型婚活バラエティーというジャンルの恋愛リアリティーショー。

有名な「テラスハウス」「あいのり」「バチェラー」などの作品と大きく違っているのが、会話だけで結婚相手を見つけるというもの。

つまり、参加者は会話だけでお互いを知り合い、プロポーズをして婚約するまで顔を見ることができないのだ。ゴールが結婚という条件はバチェラーと同じだが、容姿で判断することはできない。名前や年齢、ある程度のことは会話の中で交換しあえるが、伝えなかったことは会うまでわからない。声や喋り方の印象で想像した外見の人と真逆の人が現れて少々狼狽える人も中にはいる。

顔を見ないでという点の目的が「人を内面で判断する」なのだが、どうしても見ている私は、初対面の二人の反応に目がいってしまう。

 

電話で真剣に自分の悩みを聞いてくれていると思っていた相手が、実は寝転んで鼻をほじっていても声だけでは判断できない。

目の動きや仕草、その情報量は思っていたよりも多い。

結婚相手を決めるとき、果たして判断基準はどこにあるのだろう。

 

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参加者は男女分けて生活をし、PODS(ポッド)と呼ばれる個室で壁越しに会話をする。アメリカが発祥の番組で部屋の形など似せているのだが、日本版は月をイメージしており、お互いを隔てる壁が満月の形になっている。またPODSの形も三日月になっている。カップル成立を果たし、初めて二人が会う場所も頭上に大量の藤が垂れ下がる中、アーチの橋を渡る、とても幻想的で日本らしい光景が広がっている。

PODSの中で会話をして相手を決める期間は、わずか10日間。

その後、婚約したカップルは一ヶ月間のバカンス、同棲を始める。

そしてその末に、二人の気持ちが変わらなければ結婚式となる。

 

面食いだった。でもそれで痛い目にあった。

自分は容姿で判断される。もっと中身を見て欲しい。

人はやっぱり中身だよね?

それを実験するリアリティーショーだ。

 

2部構成で描かれる結婚までのカウントダウン

内面を見つめた会話だけで選ぶ第1部と、選んだ相手と答え合わせをする顔を突き合わせて生活する第2部。2度おいしい構成になっている。第1部の10日間という短い期間はお見合いをぎゅっと編集しているので、正直出演者たちの性格や気持ちの葛藤があっさりしていると感じてしまう。テラハやバチェラーなど、ある程度期間にボリュームのあるものを見てきたので物足りない。だから第2部があるのだと思う。ある意味そこが本番であり本編なのかもしれない。まだ第2部は触りしか配信されていないが、なんだか顔を見なかった頃の方が夢を見れて平和だったように思える予告がちらりと最後に映っていた。

でもそうなのかもしれない。

私にも電話で話していた時の方が気が合って楽しかった、という経験がある。

会って話した時の印象と微妙に違ってしまっているのは、自分が勝手に想像して作り出したもう一人のその人がいるからなのかもしれない。

携帯彼氏なんてどうだろうか」そんな失礼なことを妄想した。

 

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リアリティーの魅力

その人の喋り方で伝わり方は変わり、言葉尻を気にし、コンプレックスの過去を披露することに戸惑い、男女の家庭での役割を議論し、相手の弱点に寄り添い、自分とはどういう人間なのかを分析する。内面というのは単に性格が良ければいいという話ではない。自分との価値観や結婚への理想にその人が当てはまるかのすり合わせだ。

 

恋愛リアリティーショーという言葉を聞けば浮ついた男女を想像するが、実際はもどかしさでいっぱいだ。そのもどかしさに共感するのかもしれない。

 

人の恋愛や恋愛観、人生観にああだこうだとぶつぶつ呟きながら見る。

もし男女で見ることがあれば、男と女視点の違いなどを言い合うのも面白いだろう。

結婚している人もしていない人も、理想と現実を見つめ直す良い機会かもしれない。

「ファーザー」不思議の国の認知症の世界

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年を取り老人になれば、子供や周りにいる人の名前がわからなくなることは当たり前だと思ってきた。

祖父母の前で、5分おきに自己紹介をし直さなければいけないことを不便に思うときはあっても不思議に思うことはなかった。

どうして、本人が混乱していることを想像しなかったのだろう。

子供に接するような態度をとってしまったのだろう。

 

映画「ファーザー」の世界はとても奇妙だ。

冒頭からホラーのような展開と音楽。主人公のアンソニーも混乱しているが、観ている私たちもとっても混乱してしまう。

認知症の人目線で描かれた今作は、終始時間軸が交差し、今自分がどこにいるのかわからなくさせる。未来を予知しているかのように感じる場面もあるが、それはリアルな認知症の世界を覗いているのだ。

「私は孫の○○よ」と伝えた数分後に、「あなたは誰?」と聞いてくる。それを繰り返していると、未来も過去も今もシャッフルされたような感覚になる。

アンソニーは何度も腕時計の在処を尋ねる。

自分がどこにいるのか、コンパスのような役目を担っているのかもしれない。

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私の祖父が認知症の前兆を見せたとき、お金を盗られたと言った。それは本当にポピュラーな症状で、それを言って騒ぎ出したら認知症を疑った方がいいとさえ言われた。アンソニーもまた、腕時計を盗られたと周りの人を疑った。

私の祖父はとても頑固で、気前がよく・・・アンソニーと少し似ているかもしれない。

みんなが手を焼いていたのは確かだ。すっとんきょうなことを言い出した時、面食らった周り同様、祖父も混乱し怯えていたのではないだろうか。

この映画の視点は、憶測なのか事実なのか。現実的に考えれば作り手側の憶測なのだろうが、それにしても妙な説得力がある。

 

私の祖母はとても大人しい性格だった。

老人ホームに入ることにも、一緒に入った祖父が先に亡くなったことを知られまいと私たちがついた下手な嘘にも、何も言わなかった。

毎週、祖母がいる山の上にある老人ホームを訪ねた。

老人ホームは妙に静かだったことを覚えている。

認知症が進んだ人が多く、快活におしゃべりをしている人は少なかった。

食堂に祖母がいるタイミングで訪れた時、部屋の隅の方に座ってつまらなそうにしてる祖母と目が合った。いろんなことを忘れてしまった祖母の顔がぱあっと華やいだ。私たちの名前は今日もうろ覚えかもしれない。でも確かに、自分に会いにきたということを認識していた。

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アンソニーは頑固で、人を傷つけるようなことも言ってしまう。介護する娘のアンは、父親の言動や行動に不安げだが、たまに褒められると少女のように微笑んで喜ぶ。父親は年をとっていっているだけだとアンは思おうとする。しかし変わっていく父親がSOSを出した時、アンは自分の考えが甘かったことに気づく。

 

全編ほぼ室内で、同じような廊下を行ったり来たりするシーンが続く。混乱した不思議の国のアリスのような世界は、明瞭に終わるのではなくひっそりと幕を閉じる。

自分が別の何かに変わろうとしている感覚を味わう。

 

「メイドの手帳」逃げ出せない母親業

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気づけば周りにはシングルマザーがたくさんいる。そのほとんどが夫からの援助はない。子供の誕生日もクリスマスも何も届くことはない。煙のように消えて、どうしてそんなにあっさりなかったことにできるのか。日本にも海外にもシングルで子育てをする人を助ける制度がある。でもそれが人生全てに寄り添ってくれるわけではない。無理難題を押し付けられる時もある。

子供が小さい内は、しょっちゅう体調を崩す。仕事中、熱が出たと報告が入れば仕事を投げ出して駆けつけなければいけない。そういう時、子供がいない人ならまだしも、子供をずっと育てていたはずの年上の女性にも嫌味を言われる。子供を産むまでに誰にも文句を言われないような役職にたどり着けている人がどれくらいいるだろう。子供に寄り添うため、保育園近くの職場、突然の用事に休める会社を選ばなければいけない。有給休暇がないような会社でも、働かせてもらえてることに感謝すらしなければいけない。

夫からの精神的DVを受けていたアレックスはある夜、幼い娘を抱いて夫が寝る横をすり抜けて家を飛び出した。頼る当てもなく、肝心の政府の支援を受けるにも長い順番待ちや制約だらけの始末。車が彼女たちの家で、娘は1ドルの人形を抱いて眠っている。

挙句、夫には子供を連れ去られたと裁判を持ちかけられる。

お金もない、仕事もない、家もない、子供を養育する資格もない。

しかし何よりの最初の問題は、アレックスがDVを受けていると認識していなかったこと。身の危険は感じつつも、アレックスは身体的に怪我を負わされたりはしていなかった。殴られて1週間消えないアザでもできれば気づけたかもしれない。夫は娘のことも(一応)可愛がっている。だから世の殴られ髪を掴まれているであろう女性たちよりは、自分はマシだとすら思っていたのだ。DV被害者だということにやっと気づいたアレックスは娘と共に、DV女性の駆け込み寺のシェルターに入居する。

この「精神的な虐待者」にとても世の中が厳しいことも、シングルマザーの闇として描かれている。

 

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DV被害者はまた元の生活に戻ることが多いらしい。それも何度も。家とシェルターを出たり入ったり。その途中で目が覚める人もいれば、諦めて身を任せてしまう人も。あんなに娘と二人生きるため奮闘していたアレックスも、元いた生活に戻り、酒に酔った夫に暴言を吐かれても眉ひとつ動かなさなくなる。無気力人間になってしまい、ソファーに一日中寝転がり深く深く沈んでいく。「メイドの手帳」は時々ミュージカルのようなユニークな表現がされる。ソファーに本当に吸収されてしまうのだ。光も声も届かない穴蔵の住人になってしまう。

私の友達たちもそうだった。

何度別れろと言われても、そうしなかった。もちろん子供を一人で育てるのは誰だって怖いだろう。でも自分はこんなものだ、だってずっとうまくいかないし・・・というゾーンに入ってしまっているようにも見えた。彼女たちも休みの日はソファーに食べられていたのかもしれない。

 

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アレックスは妊娠をしていなかったら、大学に入るはずだった。生活に終われるようになったアレックスはノートを開いても何も書くことができない。でもメイドとして色んな家庭のトイレや鍋を磨き、「文字は読める?」なんて屈辱的なことを言われながらも歯を食いしばる生活をがむしゃらに続けていると、急にペンが進んだのである。書くことが見つかったように。

豪邸を掃除しながら、こんなところに住めたらどんな気持ちだろうとアレックスは夢想する。カシミヤのカーディガンに袖を通し、高級そうなワインを飲む。夢にまで出てきそうな可愛い完璧な子供部屋。自分たちの家はカビが侵食して、とても人が住めるような状態じゃない。それでも娘と二人で幸せに暮らせるなら、小さな家でいいとアレックスは願う。

子供と生きることを選んだ親は、どんなことがあっても子供が救いであってほしい。そんな願いが酷なほど、逃げ出したい現実ばかりが待っている。切り詰める生活に右も左もなくなり、人に情けないお願いをする時もある。アレックスはそんな、今まで言ったことのない図々しいお願いが自分の口から出たことに驚き、必死に自分を宥める。

育児や仕事に疲れて漫画喫茶にちょくちょく逃げ込んでいた友達も、有給休暇もくれない会社相手に、家族手当の直談判をしていた。

 

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数々の困難を乗り越えて手にした最低賃金のメイドをしながら、自分の夢であった書く仕事に就くため、子供を抱えながら大学に入学するというストーリーは見る人に希望と勇気を与えてくれる。

今作はNetflixのリミテッドシリーズの中で、歴代最もビューポイントが高い。

アメリカ社会の現実を、実話をもとにしたこの作品が歯痒くなるほど丁寧に描いている。

子供を純粋に愛しているアレックスの愛だけが唯一の救いであり、貧困の殺伐とした中できらりと光る安心材料になっている。

Netflix「今、私たちの学校は…」最新レビュー

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Netflix「今、私たちの学校は…」は最先端ゾンビ映画だ!

 

1.今までのゾンビ映画との比較

Netflixで1月28日から配信が始まった、韓国ドラマ「今、私たちの学校は…」は、公開日初日にいきなりNetflixのTV show部門で全世界1位になった。

題材は学園×ゾンビ。

高校に突如発生したゾンビウイルスが次々と蔓延し、校舎内はゾンビで溢れ地獄と化す。そのウイルスは町へも広がり、生徒たちは警察も救助隊も来ない中、学校という孤立した空間で迫り来るゾンビたちと戦う。

 

ゾンビものといえばバイオハザード、ウォーキングデッドという洋物がぱっと頭に浮かぶ。しかし、2016年に公開した韓国映画「新感染」はハリウッドに匹敵するクオリティであった。ゾンビたちの動きから特殊メイク、CGのリアルさグロさは目を背けたくなるほど。この作品は全世界で大ヒットし、2020年には続編も公開され、コロナ禍ながら韓国•世界ともにまたもやヒットした。今作の本編の中でも新感染というワードが何度か出てくる。

 

韓国の映画やドラマの勢いはすごい。

とくにNetflixのランキングを見ていると、並ぶのは韓国とアニメばかり。最早2強となっている。

私はいわゆる洋物のゾンビ映画が好きでこれまで、ゾンビのパニックムービーを好んでたくさん見てきた。

ゾンビと立ち向かうのはたいていが大人たちで、特殊な任務を受けてきたスペシャリストや、無敵の力を秘めた者、そしてピストルや爆弾など武器も多様に使えるパターンが多い。しかしパニックムービーの見所は、ブラッドピットやミラジョヴォヴィッチという、頼れるスーパーヒーローが現れなかった場合の庶民の頑張りだったりもする。

ありえないシチュエーションかもしれないが、ゾンビのような未知の危険に晒された時、自分ならどうするか。どう戦いどこへ行けばいいのか。今作の舞台は、どこにでもある高校。そして高校生たちが突然現れた映画でしか見たことのないゾンビたちと武器もない中、知恵と勇気だけで戦わなければいけない。そんな彼らに自分を重ねて見るのも面白いかもしれない。劇中のセリフで、悲惨な状況を見た生徒が友達に「新感染だ!」と言うと、信じていない友達は「あれは映画だろ。なんで学校で起きるんだよ」という一コマがある。とてもリアルなセリフだと思った。

ウェブ漫画原作の今作は、生きるか死ぬかの緊迫した状況ながら会話がクスッと笑えたりと緩急のバランスがいい。

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 2.韓国の社会現象の反映

ゾンビウイルスを開発した、科学者の悲しい生い立ちも見所である。昨今、韓国ではいじめMe tooというものが相次いでいる。アイドルやスポーツ選手に過去いじめや暴力を受けていたという内容ではあるが、学園を舞台にした以上「いじめ」という題材は切っても切れない縁だろう。日本でもいじめで自殺をしたというニュースは当たり前のように耳にする。科学者の息子もいじめを受けており、その息子に立ち向かう力を与えようと、この危険なウイルスを投与してしまったところから悲劇は始まる。私利私欲の為に生み出されることの多い「ゾンビウイルス」の中で、純粋に息子を助けたかったという切り口も新しいと思った。映画内で社会問題を取り上げることはよくあるが、弱者を作り上げ虐げ続けた結果、弱者が牙を剥き今作はゾンビを生み出した。

生徒たちの友情や恋愛、ゾンビウイルスを生み出した悲しい人間社会の背景、疑念や希望の中で生徒たちが誰とどう生き抜いて出口へと向かうのか、ヒーロー不在のゾンビムービーを是非見てみてください。